グリーグ:4つのノルウェー舞曲 Op.35
ー今週のテーマは、モーツァルトとヨーロッパの色彩。
ー今日は北欧の生き生きとした舞曲。特に2曲目を聴いていただきたい。
グリーグ1843-1907)の生きた当時のノルウェーはスウェーデンとの連合王国だっが、ノルウェー人の連合への不満によって独立への動きが高まった時代だった。
グリーグはノルウェーの自然や文化をこよなく愛し、また、自国の民俗舞踊や民謡に大きく影響を受けた。
「4つノルウェー舞曲」も、民族音楽の影響から生まれた音楽の一つで、もともとはピアノ連弾の曲として1881年に作曲された。のちにハンス・ジット(ボヘミア出身のドイツのヴァイオリニスト・作曲家・音楽教師)によってオーケストラ版が作られた。各楽器の特徴が活かされた色彩感豊かな編曲となっている。
Ⅰ Allegro marcato
三部形式(A-B-A)。始めは4分の2拍子の軽快で情熱的な舞曲。衝撃的な曲の冒頭の後に、クラリネットとヴァイオリンによって緊迫感のある弱奏で開始される。その後、主題が各楽器に登場し、速い展開の中でアクセントを活かしながら緊張感が増し前半部を終える。
中間部は前半部とは対照的な穏やかな雰囲気で、オーボエなどの各楽器がのびやかに歌う。微妙な和声的変化によって、光が広がったり、時に翳りを見せながら、光彩感豊かに進められ中間部を静かに終え、再び前半部の主題に戻る。
Ⅱ Allegretto tranquillo e grazioso
4曲中最も有名な曲。三部形式。4分の2拍子の落ち着いた雰囲気の舞曲で始まる。 エネルギッシュな中間部が現れ、最初の主題を用いながらも急き立てられるように情熱さを増していき、また急に何事のなかったように落ち着いた前半部に戻り、静穏に曲を終える。
Ⅲ Allegro moderato alla Marcia
三部形式。行進曲風の舞曲。木管楽器で明るく快活に始められ次第に盛り上がっていき、全奏となったときは、主題が三連符の形に変わって登場するなどにより、賑やかな雰囲気。中間部は前半部の主題の変奏となっており、前半部のG-durの快活な性格と対照的に、同主調のg-mollで柔らかく哀愁漂う旋律が奏される。
Ⅳ Allegro molto
導入部と終結部を持った三部形式。
ミステリアスな雰囲気の弱奏で低弦により曲が開始され、オーボエとホルンの何かを予感させるような動機をきっかけに緊張感が一気に高まり劇的に導入部を終える。そのオーボエとホルンの動機は次の主題の中に用いられて元気の良い性格で始まる。
中間部は導入部の主題を中心にどこか怪しげな雰囲気で曲が進むが、先ほどのオーボエとホルンの動機による前半部の主題も形を変えて顔を出し、全体を有機的につないでいる。再び前半部の主題に戻ったあと、終結部ではどこか名残惜しそうに前半部の主題が穏やかに落ち着いてくるが、最後は一気に駆け抜けるように華やかに曲を締めくくる。
演奏は、パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団。