モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503
ー今週は、ピアニストのダヴィッド・フレイにフォーカス。
ー今日はモーツアルトをもう一曲。
 1786年12月4日に完成された。1784年の第14番K.449から続いてきたピアノ協奏曲の連作を締めくくる華麗で雄大な曲。
 アインシュタインによると、25番は21番ハ長調を「力強いものに高めた曲」であり、24番ハ短調の絶望的な情熱の後での必然的な「自己確認である。勝利は勝ち取られた。勝利は、第一楽章の勝ち誇る行進曲の主題の中に、最も単純な、最も抗しがたい形で象徴されている。」
 
第1楽章 アレグロ・マエストーソ ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式
 マエストーソとあるように、力強いファンファーレ風の主題で始まるが、提示部では何度も短調のかげりを見せる。展開部では、第1提示部後半に登場した副主題が繰り返される。
 第2楽章 アンダンテ ヘ長調 3/4拍子 ソナタ形式
 アダージョのようなゆったりとした主題が歌われる。オーケストラのみの短い第1提示部とピアノが加わった第2提示部のあとに、展開部なしに再現部が続く。
 第3楽章 アレグレット ハ長調 2/4拍子 ロンド形式
 軽快なロンド主題で始まる。主題が回帰したあとに短調で始まるエピソードは大規模で、この部分を展開部と見なしてロンドソナタ形式と捉えることもできる。なお、モーツァルトの自筆譜には「アレグレット」という速度指定はない。
 演奏は、ダヴィッド・フレイのピアノ、オランダ人の指揮者ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンとフィルハーモニア管弦楽団の協演。カデンツァはフリードリッヒ・グルダのもの。フレイとズヴェーデンのやりとりが興味深く、ズヴェーデンはフレイに共感して、細部を丁寧に描こうとしている。長調から単調へ、そしてまたその逆へ、力強さと繊細さなど、一小節ごとに微妙に変化していくモーツァルトの世界をフレイはセンシティブに感じながら演奏している。アプローチが論理的・分析的というより、感性的だ。かなり長い映像だが、時間があるときに見て聴いていただきたい。