オペラ「トスカ」あらすじ 第一幕

歴史に翻弄されて散った
一途な愛「トスカ」

第一幕

主要登場人物

トスカの登場人物
  •  スポレッタ / テノール:スカルピアの密偵
  •  シャルローネ / バス:スカルピアの部下
  •  堂守 / バリトン:聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会の番人

トスカ

「素晴らしい歌手です。しかも女そのもの。孤児で羊の番をしていたところをヴェローナの修道院に拾われ、そこのオルガン弾きの坊さんに歌を教えられ、16歳の時には評判のいい歌手でした。それから四年して、ラ・ニイナ座で華々しくデビューし、その後スカラ座など至る所で大成功を収め、今ではイタリアに知らぬ人がいないほどです。…彼女は大変なやきもち焼きなんです。…同時にガチガチのキリスト教徒で、根っからの王党派なんです。」(カヴァラドッシ)

スカルピア

「見下げ果てた奴だ。敬けんなキリスト教徒を装って、さも信心深い顔つきで十字を切り、その一方で道楽半分に人の命を弄ぶ。どれだけの人間があの男になぶり殺されたか、どれだけの女たちが、あの男に辱められたか。」(カヴァラドッシ)
「妹もまさにあの男に目をつけられた口。…私は三日後にはナポリに送られることになっていました。あの男は私の命と妹の貞操を一度に手に入れようと企てたのです。」(アンジェロッティ)

アンジェロッティ

「私は突然の家宅捜索で、ヴォルテールの本が知らない間に本棚に差し込まれていました。…それから果てしなく辛くて苦しい3年間でした。財産没収、国外追放、それでも一度はフランス軍の助けを借りてナポリに取り戻しましたが、すぐに王党派に取り戻され、ローマへ逃れました。…そしてついにナポリ軍のローマ進軍。私は捉えられ、聖アンジェロ城に投げ込まれて一年。そしてつい最近、ナポリ朝廷は、その城主として一人のシチリア男を送り込んだのです。」※戯曲については、『トスカ』サルドゥー作 笹部博司著(星雲社2008)による。

カヴァラドッシ

「父はイタリアの貴族の子として生まれたが、フランス女性と結婚し、生涯のほとんどをパリで過ごしました。僕はパリで生まれ、両親亡き後、革命時代を通じてパリで過ごし、絵もパリで学びました。」カヴァラドッシの父親はディドロやダランベールと交流をもつ啓蒙主義者で、若い頃からパリに住み、パリ出身のカヴァラドッシの母親と知り合って結婚した。マリオも自由主義者で、ローマ教皇庁から「ボナパルト派」として危険視されている。「僕たちの馴れ初めはここローマのラルジェンティヌ座で出会い、お互いに一目惚れでした。」「実は僕、ローマにいたくないんです。父のおかげであのスカルピアに目をつけられているが、フローリアが次のシーズンにヴェネチアに行くまでは、このローマにいなくてはいけない。まさに命がけです。」

第一幕

6月17日昼下がり サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会

1800年6月のローマ。ナポレオンのイタリア南下により1798年に樹立されたローマ共和国は、一年半あまりでオーストリア・ナポリ王党派に打倒され、教王国家が復活した。前ローマ共和国領事で、サンタンジェロ城の牢獄に囚われの身となっていたチェーザレ・アンジェロッティが脱獄に成功し、妹でローマで一番の美人と言われるアッタヴァンティ侯爵夫人の指図で、伯爵家の礼拝堂であるサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会の礼拝堂に身を隠す。

そこには友人で共和派の画家マリオ・カヴァラドッシがいて、アンジェロッティの妹をモデルに、恋人トスカを想いながらマグダラのマリア像を描いていた。堂守は信仰心のないカヴァラドッシを「ヴォルテール派の犬」と非難する。そこにカヴァラドッシの恋人フローリア・トスカが礼拝堂に現れ、カヴァラドッシが描くマリア像のモデルに嫉妬心を抱く。

その後カヴァラドッシは、現れたアンジェロッティを助けて、礼拝堂から遠くないカヴァラドッシの別荘に逃す。礼拝堂では、マレンゴの戦い(6月15日)でナポレオンが敗退したとの知らせ(誤報)を受け、戦勝ミサの準備が始まる。そこに共和派を一掃するためにナポリ王国から派遣されローマ警察の警視総監となったシチリア出身のスカルピアが登場。

「彼女の目は青く、トスカの目は黒い!
…しかし彼女を描いていても、私の想いは、トスカよ、ただ君だけだ!」 (「妙なる調べ」)

スカルピアは、落ちていた伯爵夫人の扇と、堂守から聞いたカヴァラドッシの様子から、アンジェロッティがここに逃げてきたことを確信する。スカルピアは、アッタヴァンティ家の紋章の入った扇をトスカに見せて嫉妬心を煽り、カヴァラドッシが浮気すると想いこむトスカを尾行してアンジェロッティを探し出そうとする。同時に、テ・デウムの合唱と管弦楽の高まりの中で、トスカへの邪悪な情欲をつのらせる。

「行け! トスカよ。
お前の心の中にはスカルピアが巣くっているのだ!」

「彼は絞首台に、
彼女は私の胸の中にだ…!」

ジャパン・オペラ・フェスティヴァル2018