野外オペラ「トスカ」

開催概要
野外オペラ「トスカ」 名古屋城天守閣前特設ステージ
【日時】
2018年
9月8日(土)・9日(日)・11日(火)
12日(水)・14日(金)・15日(土)
開場17:00 開演18:00
【会場】
名古屋城 天守閣前特設ステージ
【演目】
オペラ「トスカ」
全3幕/原語上演/字幕付き
【作曲】
ジャコモ・プッチーニ
【台本】
ルイージ・イッカ、ジュゼッペ・ジャコーザ
【原作】
ヴィクトリアン・サルドゥ「ラ・トスカ」より
- 指揮:吉田 裕史
- 演出:ピエール・フランチェスコ・マエストリーニ
- 舞台監督:ルーカ・ラマッチョッティ
- 照明デザイン:ジャン・ポール・カッラドーリ
- 衣裳統括:松田優
【主催】
ジャパン・オペラ・フェスティヴァル実行委員会
公益財団法人さわかみオペラ芸術振興財団
【共催】
名古屋市 テレビ愛知
【制作協力】
ボローニャフィルハーモニー管弦楽団
パルマ王立歌劇場
プッチーニ・フェスティヴァル財団
【特別支援】
文化庁(平成30年度国際芸術交流支援事業)
【協賛】
さわかみグループ 大和合金株式会社
【後援】
イタリア大使館 イタリア文化会館
名古屋日伊協会 名古屋市教育委員会
名古屋商工会議所 中部経済連合会
刈谷市・刈谷市教育委員会・刈谷市総合文化センター
(KCSN共同事業体)
ロッソ
出演日:9月8日(土)12日(水)15日(土)
- トスカ:アマリッリ・ニッツァ
- カヴァラドッシ:カルロ・ヴェントレ
- スカルピア:ジョヴァンニ・メオーニ
- アンジェロッティ:藤山 仁志
- 堂守:清水 宏樹
- スポレッタ:後田 翔平
- シャルローネ:品田 広希
- 看守:松中 哲平
- 牧童:井上 凱 鈴木 大智 塚本 修也
ビアンコ
出演日9月9日(日)11日(火)14日(金)
- トスカ:キアーラ・イゾットン
- カヴァラドッシ:サムエーレ・シモンチーニ
- スカルピア:ルーカ・ダッラミーコ
- オーケストラ:ボローニャフィルハーモニー管弦楽団
- 合唱:パルマ王立歌劇場合唱団
- さわかみオペラ財団選抜合唱団
- 児童合唱:名古屋少年少女合唱団
- 合唱指揮:ステーファノ・ヴィスコンティ
- カヴァー:梨谷 桃子 倉石 真 藤山 仁志
メロドラマとしてのオペラ「トスカ」
プッチーニは、このオペラを「メロドラマ」とした。それは悪漢が登場し、主人公と対立する悲劇という面と、melos-歌を伴い音楽で表現したドラマという面とがある。
オペラ「トスカ」は、歌姫トスカが、恋人で共和派のマリオ・カヴァラドッシを、王党派の悪漢警視総監スカルピアから救おうとするドラマ。マリオは脱獄してきた、前ローマ共和国領事アンジェロッティを匿うが、その罪で警視総監スカルピアに捕まる。悪知恵の働くスカルピアは、共和派を倒すだけでなく、トスカをものにしようとする。
ドラマの主軸は、信仰に熱く一途にマリオを愛するトスカと、極悪非道で欲望に駆られたスカルピアの対決。
トスカは、敬虔で純粋な信仰心を持ち、一途に恋人を愛する情熱があり、また激しい嫉妬心の持ち主でもある。更に、細かい段取りを正確に計算する冷静さ、怒りと憎しみの感情の爆発、と様々な要素を兼ね備える性格の持ち主。
その中で際立っているのが信仰心と愛であり、それがアリア「歌に生き恋に生き」に表現されている。また第一幕でマリアに祈り、第二幕で殺害したスカルピアの胸に十字架を置き、第三幕最後で「おお、スカルピアよ、神の御前で(裁きを受けよう)」と言って身を投げるシーン。これらにトスカの信仰心が表現されている。
マリオ・カヴァラドッシはトスカを深く愛しており、信仰心よりも共和主義と個人の愛が行動の動機のコアとなっている。アンジェロッティを助け、ナポレオンの勝利に励まされるマリオ。そしてアッタヴァンティ伯爵夫人をモデルにマグダラのマリアを描きつつ、
トスカへの想いを「妙なる調べ」で歌い、銃殺刑の前、看守に司祭と話すことを促されてもそうせず、トスカへの手紙を頼んで「星は光りぬ」を歌うマリオ。
このドラマの背景にあるのは、王党派のナポリ王妃マリア・カロリーナと共和派ナポレオンとの政治的・軍事的対立。王党派に巻き返されたローマが、北イタリア・マレンゴの戦いでのナポレオンの勝利により、共和派が一挙に盛り返し形勢逆転してローマを取り戻す直前の歴史的瞬間。第一幕ではナポレオンが負けたという報で、マリア・カロリーナ謁見の下、勝利のミサが行われる。しかし第二幕でそれが誤報だとわかり、囚われたカヴァラドッシは共和派の勝利に喜び、スカルピアは内心、恐怖に慄く。
さてこのドラマで、アンジェロッティは自殺し、スカルピアはトスカに殺され、カヴァラドッシは拷問ののち銃殺刑に処され、そして歌姫トスカはサンタンジェロ城から身を投げる。わずか1日に凝縮されたドラマティックな展開の原作戯曲。
それを音楽劇であるオペラ、つまり「メロドラマ」として描いたプッチーニ。ここでトスカは、女優=アクトレスであると同時にディーヴァ=プリマドンナとして、演劇性と音楽性を兼ね備えた主人公として立ち現れる。劇的ではあるが散文的な戯曲に対して、劇的であると同時に叙情性と音楽性を兼ね備えたオペラ。それは歌姫トスカを描いたサルドゥの望みであり、サルドゥ戯曲の完成でもあったのではないだろうか。
千葉商科大学教授・哲学者
伊藤 宏一
オペラ「トスカ」 ダイジェスト
