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日本の歌手が世界で活躍するために―世界の歌劇場で活躍する芸術監督たちによる特別座談―

2022.06.30

インタビュー

2022年6月に「イタリア留学助成金奨学生」と「Japan Opera Festival2023キャスティング」オーディションをイタリアと日本の2会場で実施いたしました。日本会場への来日に際して、ヴィンチェンツォ・デ・ヴィーヴォ(アンコーナ・ムーゼ歌劇場芸術監督)、アルド・シシッロ(モデナ・パヴァロッティ歌劇団ディレクター兼芸術監督、吉田裕史(さわかみオペラ芸術振興財団芸術監督、モデナ・パヴァロッティ歌劇団フィルハーモニー音楽監督)、澤上篤人による豪華な特別座談が実現しました。
※写真左より アルド・シシッロ、吉田裕史、ヴィンチェンツォ・デ・ヴィーヴォ、澤上篤人

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イタリア語を習得することの重要性

ー今回のオーディションはいかがでしたか

ヴィンチェンツォ・デヴィーヴォ(以下ヴィンチェンツォ):私たちにとって大変興味深いものでした。日本会場の中には、イタリアへの準備が整っている人もいましたね。特にイタリア語が話せる人は、イタリアの雰囲気や音楽、オペラ、そして文化の中で才能を伸ばしていける可能性があります。

アルド・シシッロ(以下アルド):同感です。留学経験の有無の差は非常に大きく、イタリアオペラを習得するには歌の練習に加えて、語学の習得が重要です。

吉田裕史(以下吉田):まずは語学に堪能でなければなりません。学校にとどまらず、できれば劇場に入り、実際に舞台に立って活動していく必要があるので、そのためにも語学は必須です。留学の時点でそこまで準備している人は、残念ながらほとんどいません。一つの言語を習得するまでには少なくとも数年はかかります。

澤上篤人(以下澤上):我々のオーディションは、一般的な「歌手のレベルを見て、イタリアへ留学させて終わり」ではなく、発掘・育成して、世界の舞台に送り出そうとしています。実際は、アルドやヴィンチェンツォのような審査員が引っ張り上げてくれます。

吉田:彼らはマニュアル的発想ではなく、それぞれにあったアドバイスをしてくれますし、相応しい環境や適切な人物を紹介してくれます。二人にようにオペラを知り尽くした芸術監督クラスの知己を得ようとしたら、実際にイタリアにいたとしても何年かかることか。とても価値のある出会いです。

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客観的に自分の武器やマーケットを分析すること

ー日本人がイタリアの歌劇場で配役されるためには、どうすべきでしょうか

アルド:日本人歌手に限らず、イタリアの若手歌手にとっても厳しい状況です。

ヴィンチェンツォ:昔に比べてオペラ市場が小さいことが問題ですが、プロとして素晴らしいピアノ伴奏のコンサートで歌う機会に恵まれるほど、また優れた芸術家が在籍する環境で経験を積むほどチャンスは多くなります。

アルド:イタリアでは大規模な劇場でさえ1公演につき4~5公演ですが、ドイツやオーストリアでは20公演行うことこともあります。欧州で開催されるイタリア語オペラプロジェクトの準備のために、様々な国から歌手がイタリアへやってくるので、それぞれの劇場へ脇役となる歌手を配役することもあります。例えば、「蝶々夫人」のスズキ役などです。

吉田:スズキ役はメゾソプラノですが、メゾソプラノは数が少ないのでそれだけでも優位です。日本文化を理解していることも有利ですね。これは一例としても、まず自分の「武器」が何であるかを理解し、どこに需要があるのかを客観的に分析し、自分の強みやマーケットを把握する事が重要です。日本で学んできたことをイタリアで磨き上げる。その成果を引っ提げ、ドイツやスぺインなどを始めとする各国で実際にソリストとしての契約を獲得するといった様に、「マーケット」と「ブラッシュアップの場」を別々に考えても良いと思います。

澤上:そうやって他国で評価を高めて、イタリアに乗り込んでくるケースもあるのかな。

吉田:最近多くなってきていますね。実際にイタリアでも頭脳流出という現象が起きていて、いい人材ほど若くして国外に出ていくようです。ドイツやイギリス、アメリカなどで活躍し、母国に凱旋するという逆輸入的な現象が起きています。

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世界で活躍する歌手を輩出するさわかみオペラオーディション

ー歌手が歌を磨くために注意すべきことは何でしょうか。

吉田:歌手は「歌唱技術」と「音楽性」の両面を極限まで高めていく必要があり、そのためには個人的なブレインやメンターが必要不可欠です。オペラ歌手は自分の身体そのものが楽器のため、他の楽器に比べ客観的に自分の声質や声色、そして音楽性を分析することが難しくなります。そのため、自分がやりたいからという理由だけでその役に挑んだり、現状の技術に甘んじた音楽作りに終始してしまう傾向があります。今まで、多くの一流歌手と共演してきましたが、彼らにはほぼ全員と言って良いほど、「声」と「音楽性」を客観的にチェックし、適切なアドバイスを与えてくれるメンターやブレインがついていました。

アルド:あのパヴァロッティでさえ、最後の公演まで専属ピアニストとしてマジエラが声のチェックをしていましたね。

吉田:歌の先生は歌唱部分そのものを優先しますが、コレペティトゥールと呼ばれるピアニストは総譜が読めるので、歌のパートだけでなくオーケストラと関わり合いながら、どのように音楽を創り上げていくかを教えてくれます。少しお金がかかってしまうかもしれませんが、テクニックと並行して「音楽性」を高めていく事は音楽家として必須ですから、なるべく早く始めたほうがいいでしょう。

澤上:うちのオーディションのすごいところは、イタリアのオペラ界、それも上の方と直接つながっているところだね。それもあって、歌手たちも研修生からはじまるものの、イタリアでプロの歌手として労働許可証を獲得したり、主役を張る者も一杯出てくれているよ。

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