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一流の音楽家とは―ボローニャ歌劇場首席奏者へのインタビュー―

2022.10.03

インタビュー

2022年8月『イタリア直送!真夏の演奏会』の際に来日された、ボローニャ歌劇場管弦楽団コンサートマスターのパオロ・マンチーニさんと、元同団首席オーボエ奏者(現リヨン国立歌劇場首席奏者)のマッテーオ・トレンティンさんにインタビューを行いました。
※パオロ・マンチーニさん(写真右)とマッテーオ・トレンティンさん(写真左)

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ソロとオーケストラで演奏する場合で、どのような違いを意識していますか

マッテーオ・トレンティン(以下、マッテーオ):オーケストラでソリストとして演奏するときは、ソリストが主役です。一方オーケストラの一員として演奏する時は、自分の音を聴かせる時と、オーケストラに混ざるタイミングを理解しなければなりません。その「チェンジ」は何回もありますので、柔軟かつ瞬時に対応する必要があります。

パオロ・マンチーニ(以下、パオロ):役割によって違います。オーケストラの中にいるときは、自分の役割にあわせた演奏をする必要があります。Fila(tutti)として演奏する時とコンサートマスターとして演奏する時でも違います。コンサートマスターの場合、オーケストラの一員として音楽に合わせた演奏を行い、ソリスティックな表現を求められる時は正にソリストのように演奏する必要があります。求められている音楽を表現することも必要ですし、歌手の伴奏を行うときはそれに合わせた演奏が必要です。もちろん、ソリストとして演奏する時はそれに相応しい音色や表現など、つねに音楽に合った多彩な演奏法を持ちあわせている必要があります。
※Fila(tutti)=オーケストラでコンサートマスターや首席以外の弦楽器奏者達のこと

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首席奏者として、どのような点に気を配っていますか

マッテーオ:私はオーボエの首席として、他のメンバーをリードするために分かりやすい演奏を心掛けています。リズムはもちろん、音楽の方向性が一致している必要があります。なぜなら、それぞれ楽器の個性があったとしても、音楽の方向性は一つだからです。また他の首席たちと同様、常に音楽に耳を傾けています。パオロはヴァイオリンの首席奏者であり、かつコンサートマスターでもあるので、より重要な役割が多いでしょう。僕の10倍は気を配っている(笑)。

パオロ:実際、オーボエの首席は全ての楽器を束ねていると言えます。なぜなら、コンサートマスターのように他の楽器をまとめる役目をしているからです。そのため、オーボエは指揮者の前、オーケストラの中央に位置しています。
コンサートマスターの仕事は2つあり、1つ目は指揮者との仕事です。コンサートマスターは、指揮者の近くにいて基準となる演奏をします。リハーサルを重ねるうちに指揮者と音楽を追求する関係が生まれます。コンサートマスターの能力によって楽団員が得られる情報は大きく変わってきます。2つ目は、指揮者が表現する膨大な意図を楽団員に伝える役割があります。どのように演奏するか、何がしたいのかを、演奏を通して鮮明に伝えます。そして一つ一つの音の裏側には根拠がなくてはいけません。音楽の方向性はたった一つであり、みんながそれに向かって演奏することはオーケストラの中でとても大切なことです。

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一流の音楽家に必要なものは何だと思いますか

マッテーオ:音楽性やテクニック、才能はもちろんですが、一番はクオリティーの持続性・恒常性があるかどうかだと思います。一流の音楽家は、どんな状態でも高い演奏レベルを保ちます。これは、テクニック云々よりも重要です。例え今日どんなに素晴らしい演奏ができたとしても、翌日は学生のような演奏になってしまった…という事ではダメです。

パオロ
:彼の言う通り、優れた音楽家は常に高いレベルを保ち続けています。人生にはいろいろなことが起こりますよね。以前、私の父が危篤状態になった際、私は救急病院からリハーサルのためボローニャに向かい、リハーサルが終わるとすぐに病院に戻り、夜にはコンサートに出演するためにボローニャへ戻りました。私の状況に気づく人はいなかったと思います。人が生きていく中で、その人が背負っているものには誰も気がつかない。そんな中でも恒常性があることに、意味があるのです。
また、プロフェッショナルには1つのプログラムに1か月という長い準備期間は与えられません。現に私は8つの異なるプログラムを1か月で仕上げることもあります。超越したスピードも必要ですね。
最後に、柔軟性も大変重要です。その時々に合わせて、自分の役割を瞬時に把握し、実行できるということです。さらに、楽譜に書いてある以上のことを読み解き、すぐ理解し演奏できることも必要です。

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パオロさん、マッテーオさん、貴重なお話をありがとうございました。
また日本で演奏して頂ける日を楽しみにしています。

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