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REPORT

公演レポ|青森オペラコンサート(弘前公演)

雪を期待して降り立った弘前。しかし、一面乾いたアスファルトだった。「青森の地域活性をオペラで!」という熱い想いは大きく広がり、第1回目のコンサートにもかかわらず500席のホールは満席になっていた。実行委員の数も50名を超え、演奏家達もその期待に応えようと力が入っていた。今回は趣向を変えて、演出側の視点からの公演レポートをお届けする。

2024.04.19 全国公演 青森

大成功を確信したのは当日のリハーサルだった。 みんなで歌おうのコーナーの手伝いを青森オペラ実行委員のメンバーにお願いをしていたが、凄い熱量で楽しそうに取り組んでいた。リハーサル終了時にはコンサートが終わったような大盛り上がり。ただ楽しんでいるのではなく、それぞれがお客様の為にそして、今後の地域活性の為に責任感を持って取り組んでいたからだと思う。そのおかげで、お客様が会場に入る前からホールは温まっていた。今回みんなで歌おうのコーナーで歌った「ヴォラーレ」の歌詞は、書道家清野秀汰氏に作成を依頼し、横断幕も素晴らしいものが出来上がった。

コンサート当日は、お客様でいっぱいになった会場に子ども達の姿がたくさんあり、オペラを身近に感じて、子どもから大人まで楽しめるコンサートにしようと企画した甲斐があった。 出演者は黒田詩織(ソプラノ)、松中哲平(バス)、篠宮久徳(ピアノ)、そして私、武井基治(テノール)。 1部はクラシックを中心に演奏した。乾杯の曲から始まり、それぞれオペラアリアを歌った。1曲終わるごとに会場に響き渡る、「ブラーヴォ!!」「ブラーヴァ!!」の大声援。歌手達はニコニコ笑顔でこんな盛り上がりは初めてだと袖に戻ってきた。会場はクラシック音楽を自由に楽しんでいて良い雰囲気で満ちていた。【写真左から:松中哲平、篠宮久徳、黒田詩織、武井基治】

続いてオペラ「愛の妙薬」の抜粋を解説付きで演奏した。このオペラは内容がとても面白いのでそれだけで楽しめるのだが、今回大きく盛り上げてくれたのは、急遽ベルコーレ役で出演してくれた青森オペラ実行委員のメンバー1人。恥ずかしがることもせず、みんなを一生懸命楽しませてくれた。ここでも私は彼から責任感を感じた。彼の頑張りにより一方通行ではない参加型のコンサートになり会場はさらにヒートアップして一部は終了した。【写真左:青森オペラ実行委員 久保栄一郎】

2部は猫の2重唱から始まった。松中、黒田の名演で会場は笑顔で溢れ、子ども達も大喜び。続いて演奏したジブリメドレーも知っている曲を子供も大人も口ずさんでいた。みんなが歌いたくなってきたところで、みんなで歌おうのコーナー。会場全体が一つとなり大きな声でヴォラーレを歌った。思う存分音楽を楽しんでもらえたコンサートとなり、最後はスタンディングオベーションとなり終演した。子供達は、家に帰ってからも大きな声で歌っていることを何度も耳にした。子供達のオペラとのファーストコンタクトが成功し、身近で楽しいものだと伝えることが出来たなら本望だ。

これから始まる青森でのオペラの序章は大成功で終わった。それは50人を超える実行委員が皆で盛り上げようとする想い、熱気が会場中を包み込んでいたからだった。彼らは毎朝6時からミーティングを行い本番の日を迎えていた。通りで今年の冬は雪が積もらなかったのだとその話を聞いて納得した。みんなで作り上げることがどれだけ重要なのか彼らに教えてもらった。

当日は徳島、喜多方からも応援団が来ていた。さわかみオペラ財団が全国に広がる中、ここ青森は今後、確実に重要な拠点の一つになるだろう。レセプションで青森オペラの赤い幕を見ながら、オペラを通して地域が盛り上がり、日本中と繋がり、新しい人とも繋がり、音楽、歌うことを楽しんでもらえるこの活動こそ、音楽家としての私の本望だと確信した。彼らはさらにスピードを上げて次の公演に向けて動き始めるだろう、私も気を引き締めて乗り遅れないようにしなくては。【写真左から:小西啓之(徳島合唱団団長)、鈴木正人(喜多方実行委員、合唱団団長)、菊池暢晃(青森オペラ実行委員会)、久保栄一郎(青森オペラ実行委員会)、澤上篤人(当財団理事長)、泊健一(さわかみオペラin徳島実行委員会副会長)】(寄稿:武井基治|さわかみオペラ芸術振興財団音楽主幹)

公演名

青森オペラコンサート|弘前公演

開催日程

2024年3月16日

開催会場

弘前文化センター 大ホール

公演内容

ドニゼッティ作曲、オペラ「愛の妙薬」ハイライトの他、オペラのアリアや日本歌曲、ジブリメドレー他

主な出演

黒田詩織(ソプラノ)/武井基治(テノール)/松中哲平(バス)/篠宮久徳(ピアノ)

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