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「オペラ『愛の妙薬』南魚沼公演」を終えて

2025年10月11日(土)、南魚沼市民会館大ホールにてオペラ「愛の妙薬」南魚沼公演が開催されました。 ハイライト上演「カルメン」(2023年)、全幕上演「椿姫」(2024年)に続く今回の「愛の妙薬」は、当地では初の喜劇作品(オペラ・ブッファ)の全幕上演となりました。

2025.10.11 全国公演 新潟

喜劇作品は、人の死が描かれずハッピーエンドで幕を閉じるもので、「愛の妙薬」は宗教的な要素もほとんどなく、日本の現代社会に置き換えても物語をイメージしやすい、より親しみやすい作品といえます。 まず何よりご紹介したいのは、「南魚沼オペラ合唱団うたのみ」のパフォーマンスの質の高さです。それは市民オペラの枠を超えた素晴らしいものでした。

「なぜ、そんなに真剣なのか。」 うたのみの皆さんと音楽の時間を共にしていると、いつも不思議に思います。 その姿は時に怖いほどであり、時に笑いが込み上げるほど真っすぐで、何かを得ようとするエネルギーに満ちています。 それはまるで学生時代に一生懸命取り組めなかったことを、大人になった今取り戻そうとしているかのような素直さ。その心がリハーサルから本番にかけて胸を熱くさせる時間を創り出していました。 今は亡き仲間のため、あるいは苦しくも出演を断念した仲間への想いなど、後悔を残さぬよう「何としてでも成功させる」という団員一人ひとりの熱き心が、舞台の神様を呼び起こしたのだと思います。

限られたスケジュールの中でも、ソリストおよびピアニストのパフォーマンスは一層輝きを放っていました。 彼らは、慣習への疑問や葛藤を乗り越え、それぞれの役と誠実に向き合い、個性を舞台に落とし込んでいました。 ただ上手く歌い演じるだけではなく、常に考え、問い、成長を止めない姿勢。 自らの表現を通して多くの人の心を動かすその姿に、真のプロフェッショナリズムを感じました。 フレッシュでありながらも芸達者な歌手たちの堂々とした姿は、凝り固まった時代の殻を破り、新たな風を感じさせてくれました。

2023年「カルメン」から公演に華を添えてくださっている地元南魚沼のスタジオバレリータによる印象的で立体的な踊り、経験と独創性を兼ね備えた六日町高校演劇部の若きホープによる芝居、そして地元の芸術文化を牽引する劇団ゆきぐにの巧妙な演技——これら多くのセクションが細やかに絡み合い、壮大で豊かな舞台が生まれました。 あらゆる事態にも的確な判断と柔軟な対応で臨み、公演を成功に導いた指揮者・山崎隆之氏、演出を担当した武井基治氏、そしてオペラ財団スタッフの皆さんの尽力なくして、この公演は成立しなかったでしょう。 また、代役を見事に務め上げたピアニスト齋藤菜緒さんにも、惜しみない敬意を表したいと思います。

私は、オペラで日本を元気にしたいと日本全国で公演を行うさわかみオペラ芸術振興財団の想いに賛同し、合唱指導及び再演演出として本公演に携わりました。 その中で多くの学びや気付きを得ることもできました。 縁の下で、誰が誰のために汗水を流して動いているのかを感じ取れる人。 そして、そうした人々に温かい言葉をかけられる人。 そういう人が増えるような現場になることで、このオペラの存在意義は、より深く、豊かなものになると感じます。

地域活性に終わりはありません。 次の局面へ進むためには、地元がより主導的に動き、〈さわかみオペラ芸術振興財団と共に歩む道の上に〉新たな風を吹かせることが求められるのではないでしょうか。 【合唱指導、再演演出 品田広希】

公演名

オペラ「愛の妙薬」南魚沼公演

開催日程

2025年10月11日

開催会場

南魚沼市民会館 大ホール

公演内容

全2幕/原語上演/日本語字幕付き

主な出演

アディーナ:黒田詩織、ネモリーノ:後田翔平、ベルコーレ:鈴川慶二郎、ドゥルカマーラ:宮本史利、ジャンネッタ:上田彩乃、合唱:南魚沼オペラ合唱団うたのみ、指揮者:山崎隆之、演出・合唱指導:武井基治、再演演出・合唱指導:品田広希、ピアノ:齋藤菜緒、ダンサー:髙橋真帆(スタジオバレリータ)

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