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観劇レポ|さわかみオペラin徳島「ラ・ボエーム」

昨日までの寒さが嘘のように和らぎ、海風も少しばかりのぽかぽかとした日差しに包まれながら12月6日(土)、〈さわかみオペラin徳島「ラ・ボエーム」〉があわぎんホール(徳島県郷土文化会館)で初日を迎えました。

2026.01.21 全国公演 徳島

徳島のオペラ公演に海外キャストを招聘するようになってから今年で4回目。今年の演目「ラ・ボエーム」のキャラクターにふさわしい二名のキャストが、イタリアより来日しました。まずはソプラノ歌手のクラウディア・マヴィーリアさん。しっかりと芯の通った歌声にフレッシュさが残る、まさしくミミを思わせるソプラノ歌手です。次にジュゼッペ・インファンティーノさん。甲高く鳴り響く圧巻の歌声は、思わず聴き入ってしまうほどの魅力に満ちています。また演技の中で見せる笑顔も印象的でした。

昨年に続き演出を務めるのは、歌手としても活躍する武井基治(さわかみオペラ芸術振興財団)です。武井氏が演出ノートでも述べた「時間」というワード。今回のオペラ「ラ・ボエーム」はこの‶時間の流れ″を軸に物語が展開していきます。それは最終的には死を迎えるミミとの出会いから別れるまでの、この物語に出てくる主要な登場人物たちそれぞれの思いの流れや、これからの未来へ向かって生きていこうとする決意が最終的には見えてくる、非常に深みのある演出でした。主要キャストは日替わりで、同じキャラクターを演じていてもその表現にはそれぞれの個性が現れます。これが日替わりキャストの醍醐味です。両日をご鑑賞された方はわかるかもしれませんが、まるで宝探しのように日ごとに異なる魅力を伝えてくれます。

1日目をいい表すなら「情熱でアダルティ」でしょう。もう徳島公演には欠かせない存在、ロドルフォ役の本多信明さんは年々透明度が増し綺麗な歌声を響かせてくれます。また三幕で魅せる哀愁を帯びた表情は、心を打つものがありました。ミミ役のクラウディア・マヴィーリアさんは先ほども述べた通り、まっすぐで純粋な歌声。《私の名はミミ》は圧巻でした。ムゼッタ役の黒田詩織さんは大人の色気というのがふさわしいほど魅力で溢れており、アルチンドロとマルチェッロ、二人の男性に見せる声音のひとつひとつが洗練されていました。マルチェッロ役の鈴川慶二郎さんはダンディーさが魅力的で、声はもちろんのこと立ち振る舞いが素晴らしく、二幕や四幕でみせるコミカルな演技と三幕での辛辣なシーンとのギャップは、思わずハラハラさせられました。

2日目は「素直でフレッシュ」がふさわしいですね。ミミ役の玉置彩音さんは、ミミが持つ儚さや透明感を際立たせ、ラストシーンで一人一人に声をかけていく場面では、か細いながらも響く歌声がじんわりと心に染み入りました。ロドルフォ役のジュゼッペ・インファンティーノさんの伸びのある高音は、会場の後方まで響き渡る圧巻の歌唱を披露し、ミミとのデュエットでは二人の息の合った響きを感じ取ることができました。ムゼッタ役の立塚夢子さんは爛漫なムゼッタを存分に表現し、華のある二幕はもちろん四幕の友達を思う優しい歌声も印象的でした。マルチェッロ役の日和充さんは第一声から放たれる響きある透き通った歌声が素晴らしく、感情をのせながら変化していく声音がとても魅力でした。

両日に参加し、キャラクターの違うキャスト陣との調和が絶秒だったショナール役の宮本史利さん、コッリーネ役の松中哲平さん、ベノアとアルチンドロの二役を演じた品田広希さんの3名。一幕で繰り広げられる男性陣キャストによる軽快なシーンは思わず笑顔があふれるほどでした。オペラ公演への出演も板についてきた地域合唱団「コーロ・インダコ」の存在も忘れてはなりません。声量は言うまでもなく、ハーモニーや演技、衣裳や小道具の細部までこだわり抜いた舞台づくりは非常に完成度の高いものでした。

オペラを彩るのは舞台の上だけではありません。今年は昨年に続き、オーケストラの演奏での上演が行われ、指揮者・山崎隆之氏の指揮の下で奏でられる音楽は感情をさらにかき回し、揺さぶってくる。特にこの公演から加わった打楽器は重要なシーンで大活躍しました。そして照明、映像、大道具、衣裳に至るまで、このオペラ「ラ・ボエーム」の魅力を最大限集約した非常に贅沢な作品が、この徳島で出来上がったのではないでしょうか。その一瞬にかかわり、そして観ることの出来る幸せを、ミミの生き方になぞらえながら、噛みしめてほしい——そう強く感じた公演でした。

公演名

さわかみオペラin徳島「ラ・ボエーム」

開催日程

2025年12月6日(土)、7日(日)

開催会場

あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)

公演内容

オペラ「ラ・ボエーム」全四幕/原語上演・日本語字幕付き

主な出演

【6日】ミミ:クラウディア・マヴィーリア(Claudia Mavilia)、ムゼッタ:黒田詩織、ロドルフォ:本多信明、マルチェッロ:鈴川慶二郎【7日】ミミ:玉置彩音、ムゼッタ:立塚夢子、ロドルフォ:ジュゼッペ・インファンティーノ(Giuseppe Infantino)、マルチェッロ:日和充【両日】ショナール:宮本史利、コッリーネ:松中哲平、ベノア/アルチンドロ:品田広希、パルピニョール:市岡雅明、合唱:コーロ・インダコ/指揮:山崎隆之(さわかみオペラ芸術振興財団)、演出:武井基治(さわかみオペラ芸術振興財団)/さわかみオペラオーケストラ|コンサートミストレス(ヴァイオリン1):小野唯、ヴァイオリン2:松本裕香、ヴィオラ:牧角かのん、チェロ:高橋裕紀、コントラバス:奥山尋冬、フルート:牧ほのか、オーボエ:松本純奈、クラリネット:青木萌、ファゴット:君塚広明、ホルン:田中大地、トランペット:火ノ川慎平、トロンボーン:直井紀和、パーカッション:本間達也、ピアノ:水野彰子

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